夜明けのCRYSTAL ROAD 北上京だんごの風

懲戒解雇から復帰した組合分会長のブログ

ずんだ・もちこのデザインをした「やなせたかし」さんの戦争体験から来る思い

 東北の高速道路のSAに立ち寄ると、顔が大きな丸で描かれたキャラクターが二人並んだ絵が入った、冷凍物のお土産品のショーケースに入れている緑色の箱を見かけることがあると思います。東北を代表するお土産品「ずんだ餅」が入った北上京だんごの商品です。そう、高速道路のSAでもお土産品として北上京だんごの商品はあります。社長とアンパンマンの作者である、やなせたかしさんとの人を介したつながりがあり、キャラクターデザイン依頼が実現して、やなせさんがデザインしたキャラクターが箱に入っています。現在ではやなせたかしさんもお亡くなりになられていますが、94歳まで元気で活躍されていた漫画家でした。

 前回までの解雇撤回闘争の話しは、2017年の7月まで進んでいると思います。なぜ今、急にやなせたかしさんを話し出したのか? 私は、やなせさんの過去に対して共感できるところがあり、その思いは、この日本を支え、バブル崩壊後もまじめに働く労働者は、もっと誇りを持って働いていいという思いにつながるところがあります。そんなやなせたかしさんデザインのキャラクターが主力商品に入っていることは、今、従業員としての立場で言わせてもらいますが、大変ありがたく思う次第です。

 2017年7月下旬、解雇撤回闘争の最中、仙台地裁から出された判決は「解雇無効」という判決でありました。その判決の要点となるのが「(解雇理由にあたる行為について)被告の就業規則に違反することを理由に懲戒解雇を確定的に通知するはずであるところ、被告は、これに反して、前記認定事実のとおり、原告に対して本件解雇を通知した際に、同人に対して今後の組合活動の中止及び〇〇(合同労働組合)からの脱退を求め、これと本件解雇の二者択一を執拗に迫り、解雇通知書を原告に交付する際にも同趣旨の発言を重ねたものであり、これらの行為は被告が主張する解雇理由と整合するものではないことからすれば、結局、本件解雇は、原告が組合に所属して組合活動を行っていることを主たる理由としたものといわざるをえないから、被告の主張は採用できない。」という内容でした。この判決の結果はNHK仙台の地方のニュースでも報道され、その報道の中でも労働組合活動が理由の解雇といわざるを得ない、というような内容が語られました。

 会社はもうこの時点で私の解雇無効を認めざるを得ませんでした。労働者が主体となった労働組合に対し、会社が介入し支配することは法律上あってはならないことです。しかも組合活動を不満に思い、それを理由に解雇するというようなことはもっての他です。もはや状況から見ても、会社は裁判闘争でも言い逃れはできませんでした。会社の誹謗中傷、機密情報が暴露されたという思いで強気になったのだと思われますが、労基法違反を改善のため訴え、しかもその内容は真実であり、普通に考えてどこにも誹謗中傷、外部に対しての機密情報が暴露などは見当たらないのです。

 私はこのように感覚がマヒしてしまっている会社、あたりまえのことがあたりまえに行われていない点がある会社を、労働者の力で、どうしても変えなければならない・・・と、解雇撤回闘争中も継続して思っていました。そのためには自分も痛みを伴い、傷口はなかなか治らないかもしれない。それでも、このまま引き下がったらこの日本において、労働者が搾取されている現実、その構図に対して問題提起が出来ない・・・、そう思っていました。会社の都合で労働者を搾取しているという現実は、消費低迷、少子高齢化など、いろいろなところに表れ、ひずみがこの社会に出ています。政府が資本家側の考えを受けれ、小泉政権で非正規雇用が増大し、その付けが今、出ており、今のままでは多くの若者の将来に光明が差すことはありません。

 ここで、このブログの題目についてお話ししますが、「夜明けのクリスタルロード」、その題目は実は私が職場復帰したので私に対しての夜明けではなく、現在置かれている日本の労働者がこれから歩む道に、光明が差すような道を作らなければならないという思いで、そういう思いが題目になっています。自分に対して「夜明けのクリスタルロード」と題目を付けたのだとしたら、個別的な考えの元、組合活動をしてるということにもなり、自己満足もいいところで、闘争に光明が差し、分会長としても満足している、もう明るい光が差したのだからもう活動もいいのではないか・・・そういうことになってしまいます。しかし、自分はまだまだ、そんな段階には達していません。

 またブログは多くの大衆が見るものです。私の考えはブログで話すわけですが、私が私が・・・と言っていたら、労働組合の分会長なんてする資格はありません。個人的に経営者と交渉すればいいということになってしまいます。

 そこで、やなせたかしさんのお話しです。人気アニメ「アンパンマン」の主人公は、自分の顔をちぎって人に食べさせる、というのがあります。そのようなヒーローが誕生した背景には、やなせたかしさんの戦争体験がありました。青年時代6年間軍隊で過ごしたやなせさんは、終戦間近、上海戦争に備え1000キロの行軍をしました。そして飢えに苦しみました・・・。この体験から、やなせさんは痛切に思ったことがあったといいます。

「この社会で一番憎悪すべきものは戦争だ。絶対にしてはいけない」「今の日本では飢えが身近にないので、実感がわきにくいかもしれない。だが、しばらく何も食べないでいれば、飢えのつらさは体験できる。本当に飢えているときには、どんな大金より、一切れのパン、一杯のスープのほうがすっとうれしい」(やなせたかし・明日をひらく言葉<PHP文庫>)。

 戦争とそれによる飢えは、それまでの正論さえもひっくりかえってしまいました。「正義は不安定なもので、ある日突然逆転する」「正義のための戦いなんてどこにもないのだ」(やなせたかし・明日をひらく言葉<PHP文庫>)。

 しかし一方では、逆転しない正義もあったようです。それが献身と愛、弱者を助けること・・・、自分の身を削って人を助けるアンパンマンには、そんなやなせさんの思いが凝縮されています。

「正義を行おうとすれば、自分も深く傷つくものだ。でもそういう捨て身、献身の心なくしては、正義は決して行えない」「困っている人のために愛と勇気をふるって、ただ手を差しべるということなのだ」(やなせたかし・明日をひらく言葉<PHP文庫>)。

 また(私が正義について語るなら<ポプラ社>)では、アンパンマンを書いたのは「本当の正義」を伝えたかったからということが述べられています。アンパンマンはヒーローだが情けない。弱点もある。「正義を行う人は非常に強い人かというと、そうではないんですね。我々と同じ弱い人なんです」(私が正義について語るなら<ポプラ社>)。大変な名言です。弱い部分があるから弱い人の気持ちも分かる、考えてみればそのような部分が自分にないと、同じような境遇の人の気持ちは分からないと思います。こんな私だからこそ正論を言い闘っていけるのか?、と感じ、自己卑下に満ち満ちていた私は、やなせさんの言葉に心が洗われていきました。能力、力量は関係ない、労働者全体のことを思う気持ちが大切・・・、そうなんだよな、そうだからこそ私は闘えるんだ・・・、私だからこそ闘えるんだ・・・、そういう思いが強くなっていきました。

 裁判所から「解雇無効」の判決が出て、報道もされ、会社にはすぐさま結果が伝わりました。そして何と、今度は高裁への控訴を会社はすぐさましたのでした。

 会社はあらかも新しい事実をつかんだと言わんばかりの勢いで控訴した感じですが、しかしこちらから見れば、新たなる事実などあるはずもありません。裁判の論点からそれたあまり意味のない事項についてつかめただけ、という感じがそのときしました。裁判闘争を続けるということは、それだけ解雇中の私の給料の未払い金も増えるということになります。そのようなリスクまであるのに、その上でも闘争を続ける会社を見て、今現在の時点でも客観状況が会社は分らないのか!と、感じました。本当に労働者のことを考えているのなら、この時点で、自分たちが勝つという主観的な思いは捨てなければならなかったのではないでしょうか。裁判闘争とは別に行われていた労働委員会での審問(証人尋問)においても、論点の核心の部分について答えられなかったはずです。解雇理由の証拠など初めからあるはずがないのです。

 もはや労働者と資本家という構図の中での階級闘争に、闘争も変化していました。労働者には労働をして社会を支えているという誇りがある、もっと労働者の方に利益が回ってもいいはずだ・・・という信念での活動になっていました。ですから、高裁に控訴されても、組合としてはとことん闘う姿勢を示し、私の感情も同じ思いでありました。

 会社が高裁に控訴したことにより、私が実質無職状態での争いは、まだまだ続けられる状況になりました。私はアンパンマンのようになれるのか・・・、痛みを伴い続けても闘えるのか?、解雇撤回闘争が長引けば、私自身の心構えも、より一層、問われて行きます。でも正論を通そうとするとき、痛みは伴うもの、すでに会社と闘っている私は、そのことが少なからず実感できていました。決して最強ではないが、身近な人の幸せを願い、困った人を助けることこそ正義、アンパンマンの歌にもある通り一貫して「愛と勇気」を伝えたアンパンマンを生み出したやなせたかしさん、このような私でも、やなせたかしさんに教えられたことにより、能力・力量を気にせず解雇中も闘争に頑張ることができました。そんなやなせさんがデザインしたずんだ・もちこキャラクターが「ずんだ餅」に描かれているということは、北上京だんごの従業員として、本当に誇りに思います。やなせさんの思いにはまだ足元にも及ばない、私の痛みでしたが・・・。

 2017年8月、地裁での「解雇無効」判決後、解雇撤退闘争は継続され、新たなる展開が始まっていました・・・。